ある時あるところに一人の幼い少女がいた
少女は笛が好きで、いつも吹いていた
少女の兄は、その笛の音をよく褒めた
少女は兄が好きだった
ある日、少女は占い師にいわれた
“魔に憑かれた少女よ!この村から早く出ていけ!!”
“あぁ、けがらわしい!”
少女は笛を吹く気にもなれなかった
夜寝るとき、兄はくり返し言った
“大丈夫だから”
“一人じゃないよ”
その言葉で、少女は自然と眠りにつくことができた
次の日、兄は少女の叫び声で目が覚めた
急いでかけつけると、
腕が大きく腫れていた
腕に触れた兄も同じく叫び、飛び出して行ってしまった
おそらく、触れてしまった手を清めるために、占い師のもとへ――
“私、魔のものなんかじゃない……!!”
“一人にしないでっ!!”
少女は泣いた
泣き続け、泣き続け……
落ち着いたころに笛を吹き始めた
兄は帰ってこなかった
少女はそれでも吹き続けた
やっぱり兄の姿は見えず、短時間のうちに腫れはひどくなっていた
少女はそのまま亡くなった
次の日、占い師のもとで目覚めた兄は起きるなり、
叫び声をあげた
腕が大きく腫れていた
その時、幼い少女の叫び声を聞いた気がした
“私、魔のものなんかじゃない……!!”
兄の目から涙がこぼれる
“魔のものじゃぁっ!!この町は呪われた!逃げろおぉっ!!”
占い師の声を聞きながら、兄は泣き続けた
泣いて泣いて……少女に詫び続けたという
町中に、笛の音が響き渡っていた
-END-